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札幌地方裁判所 昭和45年(ワ)1391号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三、そこで次に、被告大林組の責任について判断する。

<証拠>を総合すると、被告大林組は土木建築等の請負を業とし、その請負つた工事についてさらに下請業者に請負わせてこれを処理するいわゆる元請業者であつて、受注工事を遂行するためには常に下請負人を必要とするものであること、被告本所運送は、一般運送事業を主とし、土木請負は従であつたが、水あげの面では後者の方が多く、被告大林組とは昭和三四、五年ごろからいわゆる機械土木の請負を受注していた関係にあつたこと、本件事故発生の際の作業は、被告大林組が受注した利根大堰工事中、被告本所運送に下請に出した重機土工工事に付随したヘドロ運搬であつたこと、右利根大堰工事は工期約三年という長期にわたるものであるが、被告本所運送はその間一貫して下請業者の一人としてその工事に加わり、被告大林組の指図に従つて工事を行つていたものであり、右ヘドロ運搬にあたつても、その捨場を同被告から指示されかつ同被告からその容器として本件コンテナの無償貸与を受けていること、右ヘドロの運搬作業はそれ自体単純なものであつたため、被告大林組の職員がこれを直接指揮監督するということはなかつたが、作業の打ち合わせは現場で何回か行われており、時には孫請会社の従業員である亡貞夫らに対しても直接注意等がなされることもあつたこと、訴外比嘉は被告本所運送の従業員としてヘドロ運搬に従事していたことが認められ、これを覆すに足る証拠はない。前記認定の諸事情のもとにおいては、被告本所運送は被告大林組のいわば専属的に近い下請業者たる実体を有しており、ヘドロ運搬作業においても、その捨場を指示されあるいは搬送用の容器を無償で借受ける等により被告大林組の指揮下で行つていたものであり、少なくとも右作業の範囲内においては被告大林組は被告本所運送の被用者である訴外比嘉に対しても直接または間接に指揮監督の権限を及ぼしていたと認められるところ、後記四認定のように本件事故はヘドロ運搬のためコンテナを加害車に積載する際に訴外比嘉の過失により発生したものであるから、被告大林組は民法七一五条第一項により本件事故によつて生じた後記認定の損害を賠償する義務がある(同被告は亡貞夫は民法七一五条の「第三者」ではない旨主張するが、同条「第三者」とは使用者および加害行為をした被用者以外の者を指称するのであつて、亡貞夫がこれに当ることは明らかであるから右主張は失当である。)

四、次に本件事故発生の具体的状況についてみるに、<証拠>によれば、本件事故現場は利根川から約一〇〇メートル程離れた草原状の河原で、路面には小さなおうとつがあるが大体において平坦な状況にあつたこと、亡貞夫は現場に放置してあつたヘドロ運搬のコンテナ(縦約3.5メートル、横約二メートル、深さ約七〇センチメートル重さ約一トン)を加害車に積載する手配をするため、事故当日、加害車に同乗して現場に到着し、当時、現場付近で作業をしていた訴外金田運転のローダーショベルでコンテナをつりあげるべく、同訴外人にその旨依頼したこと、そこで、まずはじめに亡貞夫は訴外金田と協力して、ワイヤーロープをコンテナに巻きつけたうえ、そのロープをローダーショベルのツメ部分にひつかけ、次に亡貞夫の合図により訴外金田においてローダーショベルを操作しアームをあげてコンテナをローダーショベルのボンネットの高さまで吊り上げ(ボンネットの高さは成人男子の身長にほぼ等しい。)、同訴外人が右ボンネットの上にあがつてコンテナの揺れを防ぐため足でコンテナをおさえていたこと、そこで次に、コンテナから約三メートル位離れた地点に待機していた訴外比嘉運転の加害者をその荷台がコンテナの下にくるように後退させることとなつたのであるが、コンテナが水平になつておらず、その加害車よりの部分が若干下がつた状態になつていたため、そのままの状態では加害車後部とコンテナが接触する危険があるために、これを水平にもどすべく、亡貞夫がコンテナの上がつている方に手をかけ自己の体重をかける姿勢をとりつつ、訴外比嘉に対し、声をかけて加害車の後退を促したこと、その声を合図に訴外比嘉は加害車の後退を開始したが、まもなく異音がしてコンテナが落下し、亡貞夫は右コンテナの下敷になつたこと、加害車の荷台には何も積載されておらず、運転席後部の窓をとおして後方のコンテナの状態を見とおすことのできる状況にあつたことが認められ、右の諸事実からすれば、コンテナが加害車後部の高さ以上に吊り上げられていなかつたため、同車後部がコンテナに接触し、その衝撃によりロープがローダショベルのツメから外れ、コンテナが落下したものと推認できる、以上のとおり認められ、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

そこで、訴外比嘉の過失の有無を考えるに、以上認定の事実からすれば、同訴外人としては加害車運転席後部の窓をとおし後方を確認しさえすれば加害車後部とコンテナとが接触する危険があることを知りえたはずであるのに、亡貞夫の声に頼り、後方の確認を怠り右の危険を察知しないまま漫然加害車を後退させたため自車後部とコンテナを接触させたものと推認でき、この点に同訴外人の過失があつたといわざるを得ない。

また、亡貞夫においてもコンテナと加害車とが接触するかどうかについては注意していれば当然認識しえたところであるのに不注意にもこれを認識せず前記不安定な姿勢下に訴外比嘉に後退を促したものであつて、この点に亡貞夫の過失があり事故の発生に寄与した点があるから、これを斟酌することとし、すでに認定した本件事故の態様等に鑑み、被告らは原告らに対しその損害額のうち六割にあたる金員を賠償すべきものと判断される。

(藤原昇治 前川鉄郎 佐藤久夫)

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